2003年にヒトゲノム計画が終了し、人のすべての遺伝情報が明らかとなりましたが、遺伝子解析技術はその後も益々進歩しており、最新の遺伝情報解析装置を用いれば、今や1個人の遺伝情報を数日間ですべて解読できる時代が到来しました。
このような技術革新の時代にあるにも関わらず、未だに何らかの遺伝病が疑われながら診断がつかず、家系内での発症の不安を抱えていたり、未診断がために治療法がなく困っている人たちがたくさん存在しているのが現状です。
このことは、最新の遺伝情報解析装置が非常に高額で一部の研究機関でしか解析が行われず、一般になかなか普及しないことに起因しているのです。新しい科学技術は、一般の人々にとって、その技術そのものを理解することが困難であり、その技術を応用することにどのようなメリットがあるかを判断することすら難しいものです。
しかしながら、新しい科学技術が安価に提供できるようになり、一般に広く応用されるようになると多くの人々が利益を享受することができるようになります。自動車やインターネット、携帯電話などの家庭用電気機器の技術が進歩して普及するにつれ、価格破壊が起こり、次第に安価に提供されるようになり、一般の人々の生活の利便性が向上し、生活様式まで変化させてしまう時代の変化がこの事実を証明しています。遺伝情報解析技術の進歩もまったく同様であり、科学者はこの技術のメリットを一般の人々に啓発し、普及させ、この技術による利益を人々に遍く配分する義務があると考えます。
最新の遺伝情報解析技術を持つ私達はこれまで、一部の患者の診断に貢献してきました。今後はこの技術をさらに普及させ、一般の人々が利用しやすい環境を作り、必要とする誰もが適切な負担で利用できるよう取り組むべきと考えています。
私達は、このような活動は多くの研究機関が壁を取り払い、横断的に手を取り合い、協力して取り組むことが必要であることから、それぞれの研究者が主として所属する研究機関とは独立した団体であり、営利を目的とせず、積極的に情報公開を行い、多くの市民の賛同を得て活動する主体として特定非営利活動法人を新たに設立することに致しました。本法人の活動により、日本における染色体・遺伝子解析の普及に先陣を切って寄与しようとするものであります。
平成21年春
特定非営利活動法人「染色体・遺伝コンシェルジュ」設立発起人一同
名前 | 所属 |
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大澤 真木子 | 東京女子医科大学小児科・主任教授 |
大野 耕策 | 鳥取大学医学部脳神経小児科・教授 |
岡 明 | 東京大学医学部小児科・准教授 |
岡本 伸彦 | 大阪府立母子総合医療センター・企画調査部・小児科医師 |
奥村 彰久 | 順天堂大学医学部小児科・准教授 |
小崎 健次郎 | 慶応義塾大学医学部小児科・准教授 |
齋藤 加代子 | 東京女子医科大学附属遺伝子医療センター所長・教授 |
澤石 由記夫 | 秋田大学医学部小児科・准教授 |
椎原 隆 | 群馬県立小児医療センター神経内科・科長 |
遠山 潤 | 国立病院機構西新潟中央病院小児科 |
豊島 光雄 | 鹿児島大学医学部小児科・助教 |
古川 徹 | 東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート・特任教授 |
山本 俊至 | 東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート・特任准教授 |
敬称略(50音順)、設立総会時(2008)
本NPO法人「染色体・遺伝コンシェルジュ」は、文部科学省科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成プログラム(通称:スーパーCOE)」により、平成17年度に東京女子医科大学に開設された「国際統合医科学研究・人材育成拠点の創成」(国際統合医科学インスティテュート)の研究成果・拠点形成成果として設立されました。特に著しい成果のあった疾患ゲノム解析のグループが拠点形成プログラムの終了後も持続的に研究、および受託事業を展開するための組織です。これまでの活動成果を生かして疾患ゲノム解析の受託解析などの事業を展開して行きます。